Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme
第三章
あなたもぼくが境遇に余儀なくされて住居をかえた位でぼくを疑ったりなぞはしないでしょう――しかしぼくも今のところ何だかあまり好いてはおりません。
平一郎
和歌子様
第三章
お光母子が生活の根を春風楼に下ろしてから一月もたたないうちに春風楼の女達の間に恐ろしい事が起きた。時は七月、廓にとってはありがたい真夏近い、深い青々した夜の出来事である。
その夜、市街を貫流するS河の水源地からはる/″\送られる電流は春風楼の茶の間にも強烈な白光を輝かに照していた。悦ばしい夜である。黒々した深い夜の光沢、冷やかで柔らかく吸いつくような初夏の微風の肌ざわりの夜がめぐり来たのである。白日の太陽の下に照されては、瘠せ細った骨格、露わな肋骨、光沢のないもつれ毛、血色の悪い蒼白な肉身も、夜の無限な魅力のうちに、エレキの白光に照らし出されては、一切は豊潤な美とみず/\しさを現わすのである。くろぐろと宝玉のような光輝をもつ黒髪も美しければ、透明で白い肉身の膚に潮のように浮かぶ情熱の血の色も美しい。軽やかな水色、薄桃色、藤紫色の色彩に包まれた肉体の動揺の生み出す明暗の美しさを何にたとえようか――時は午後九時であった。