Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme
時々顔を見合わした。深井は寂しい顔をして平一郎の未知の世界を仰望するような情熱を帯びた眼付をちら/\と横目で見た。深井は自分が今平一郎を誘惑する悪魔の役目をしているのではないかしらと疑ってみた。半年あまりの間の秘密を何故自分は打ち明けたのだろうか。しかし平一郎の寂しい一切の喜悦を失われたような顔を見てはそのまま打ち捨てて置くに忍びなかった。平一郎は、時折溜息をつく深井の生き生きした美しい顔色を見て、この愛する者が導いてゆく新しい世界を渇望の眼で仰ぐのであった。母と冬子と和歌子と深井との四人の愛する人達の魂のうちに長い間住んだ平一郎の魂はたま/\学校の教師に傷つけられ、更に和歌子を奪われて、傷つけられた痛手に呻きつつ何かを求めて止まないのである。お光、深井、行方の知れぬ和歌子、遠く東京に去った冬子。
「まだ大分あるのかい」
「いいえ、もう少し」古い士族町の土塀つづきの細い街に二人はしばらく立っていた。雪はしきりもなく降った。いかなる恐ろしい異変を潜めているか分らないような、世界滅却の予感のような、あわただしい静寂が空間に充ちていた。二人はまた歩き出した。