Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme
の占有者達は止み難い欲求を高台の新しい土地に充たしていた。霽れた穏かな青空には浮雲一つなく、平坦な大道が緩い傾斜をなして新開の空地と高い煉瓦塀との間にひらかれている。空地には地均し工事の最中らしい切り倒された樹木の幹や泥のこびりついた生々しい木の根が春の日に晒され、深い杉林の陰影が半分あまりを暗くしている。奥山はステッキをふりながら、その杉林の中が明治維新の時分に徳川幕府を倒すに勢力のあったM公の邸であると知らしてくれた。緩い傾斜を中程登りつめると、黒板塀に西洋式の庭園の樹木の茂りの蔭に赤い壮麗な煉瓦の宮殿が聳えて見える。尖塔の窓の橙色の綸子の窓掛に日の映るのさえが明らかに見える。Kという皇族の御殿であると奥山は知らしてくれた。青い空が永遠であるかのように美しくその上に輝いている。平一郎は哀愁を感じて来た。何故の哀愁であるかは分らないが、M公の邸を囲むセメントの塀を越えて深い森林の樹葉が路上に掩い被さっている街角から左に折れる暗い狭いやや急な坂路が続いている。奥山は「ここを折れるのです」と言い、M公の邸の対い合う竹藪をO子爵の邸だと教えた。春の日も杉林と竹藪に囲まれたその路上には射さず、寒い程に寂しかった。