Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうおんき
報恩記
Lesen Sie 報恩記 (ほうおんき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.803 Zeichen · 30 Bildschirme
わたしはこう云いかけた時、いきなり雪の中へ蹴倒されました。
「莫迦め!」
甚内は一声叱ったまま、元の通り歩いて行きそうにします。わたしはほとんど気違いのように法衣の裾へ縋りつきました。
「どうかわたしを使って下さい。わたしはどんな場合にも、きっとあなたを離れません。あなたのためには水火にも入ります。あの『えそぽ』の話の獅子王さえ、鼠に救われるではありませんか? わたしはその鼠になります。わたしは、――」
「黙れ。甚内は貴様なぞの恩は受けぬ。」
甚内はわたしを振り放すと、もう一度そこへ蹴倒しました。
「白癩めが! 親孝行でもしろ!」
わたしは二度目に蹴倒された時、急に口惜しさがこみ上げて来ました。
「よし! きっと恩になるな!」
しかし甚内は見返りもせず、さっさと雪路を急いで行きます。いつかさし始めた月の光に網代の笠を仄めかせながら、……それぎりわたしは二年の間、ずっと甚内を見ずにいるのです。(突然笑う)「甚内は貴様なぞの恩は受けぬ」……あの男はこう云いました。しかしわたしは夜の明け次第、甚内の代りに殺されるのです。
ああ、おん母「まりや様!」わたしはこの二年間、甚内の恩を返したさに、どのくらい苦しんだか知れません。