Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
だけど……真黒な穴の中にかぎりなく墜落していたみたいな、空ろさの中での混乱状態だったあのときと違い、いまの私は、自分の底に真黒な穴をあけた状態のまま固定しかけている。結局、かつての自分の贈ってくれたものは、そのときの「自分」なのだ。しかしいま、あのときの私をプレゼントされても、なんの効果もない。私は、いわばもう別人になっているのだから。
――ふと良子は思った。たしかに、いまの私は、あのときの私とは他人なのだ。そして、もしプレゼントを贈る相手こそが、そのひとの本当に愛し、必要とする相手だとするなら、あのとき、私は未来の自分に、ただ一人そんな愛しうる他人を見ていたのかもしれない。
突然、良子は気づいた。あのときの自分は、弘を追い、弘を求め、弘にだけ心を占領され、弘とともに、海に化していたのではないのかしら。この花束は、そんな自分、濃い藍色の海の中で、弘とともに死んでいた一人の自分からの、ちがう新しい自分への、切実な愛のしるしではないのかしら……?
良子は花束に手をのばした。はじめてそのプレゼントを、現在の自分への、他人からのそれとして味わおうという心が動いていた。