Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
四時半になった。彼は机に四個の『憩』を置き、新しいカケうどんの汁をすすっていた。女は、思いつめたような顔になって、まだ同じところにいる。箸をほうり出すと、彼は仰向けに畳に寝ころがった。
いずれにせよ、と彼は思う。若い美しい女が真冬の路上に何時間も立ちつづけているのなんて、異常だ。そうじゃないか? この忍耐、この献身は、いったいなんのためだ? それに、なぜ女は、わざわざあの四辻に立たなければならないのだ?
もしかしたら、女は、待っているのではなく、待たれているのかもしれない。なにかを、見張っているのかもしれない。立っていること自体で、なにかへの合図をしているのかもしれない。……麻薬の取引にでも加わっているのだろうか? 密輸団は、おそらく、多額の金か恐怖で彼女を傭ったのだ。
また、彼は思う。そうだ、たぶんあの女は、恋人が事故に遭ったか、急病になったかしたのだ。きっと、それを知らないのだ。
さまざまに空想してみながら、だが、彼はじつはある考えを避けようとしていた。自分でも、それがわかっていた。結局、彼はあの若く美しい女が、恋人にすっぽかされ、冬の四辻で八時間も待ちぼうけをくらいながら、しかし立ち去りかねている哀れな女だと、考えたくなかったのだ。