Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
やはり女はいた。膝を折って、道にかがんでいる。
びっくりして走り寄って、だが、彼はあわてて脚をとめた。女は、ケロリとした表情で無邪気に首をかしげ、道で鞠つきをしているのだ。鞠は、軟式野球用の、硬いトップ・ボールだった。女は、低声で歌を歌っていた。
すぐそばに立った彼に、女は知らん顔をつづけていた。白い球が、固い音を立てて道にはずみ、女の掌と路面とを往復する。ふと、球が横に逸れた。彼は、それを拾い上げた。
女ははじめて顔を上げた。べつに苦しげでも、悲しげでもなかった。
「返して下さい」
と、女は透明な声でいった。
「……どなたかを、待っているんですか?」
と、やっと彼はいった。
「ええ」女は低い声でいった。
「ずいぶん長いこと待っていますね。……寒くありませんか?」
「いま来ます」
女は立ち上り、手をのばした。
「そのボール、ここで拾ったんです。あなたのじゃなかったら、返して下さい」
「朝から、ずっとあなたは……」
「いま来ますわ」
女は、奪うように彼の掌からトップ・ボールを取り、片方の膝を深く折ると、また鞠つきをはじめた。その姿勢は、あきらかに彼を拒んでいた。彼を無視していた。