Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
一種の、絶対にひとまえにあらわせない屈辱として、こんな顔のまま、やつは一生ぼくを恨み、憎み、ぼくを仇敵視するのではないだろうか? それとも、彼もここでの無為で陰鬱な日常に退屈して、あんなお芝居じみた暗黙の協定、おたがいの秘密を、内心、ひまつぶしの遊びみたいに愉しんでいるのか?
いずれにせよ、山口の表情からは、そのどちらの答えも読めなかった。青カビの色をした表紙の微積分の本に目を落していたり、またさも他人たちがうるさそうに、新聞紙で顔をかくして睡ったふりをしている山口を眺めるたび、ぼくはよく子供ぎらいの老人を連想した。彼の動作にはいつもそんな片意地な、エネルギーのない匂いがした。一度、彼が机に置いたまま(そんな不用意は、めったに見せなかったのだが)の文庫本の表紙を見て、あんまりその題名が彼にピッタリしているので、一人で失笑した記憶がある。それはたしか、『隠者の夕暮』というのだった。
彼は青山の邸のあとに建てたバラックから、かなりの道のりを歩いて通学していた。が、それもべつに口に出さず、彼は自分の生活や家族たちについては一言もいわなかった。ただ、屋上での食後に、彼は黙っているのも退屈だからという調子で、おもに工場に動員されていたあいだの同級生たちの話を、ポツリポツリと語った。