Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よるのちょう

夜の蝶

山本 周五郎

Lesen Sie 夜の蝶 (よるのちょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.345 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

与平は空いた盆を持って戻り、手酌で一杯ぐっと呷った。それから鍋の下の火を見、炭をついで、洗い物にかかった。

「そこで野郎の云いぐさがいいんだ」と竹造は話を続けた。「死にかたに立派も立派でねえもあるか。死ぬこたあ死ぬこった。男らしく死のうとめめしく死のうと、誰の損にも得にもなりゃあしねえ」

「野郎はいつもその伝だ」

「男らしく死ぬなんてのはみえ坊のするこった。にんげん死ぬときにまでみえをはるこたあねえやってよ」と竹造は云った。「そう云っちまえばそれも理屈だからな。すっかりお座が白けて話はおしめえよ」

「野郎はいつもその伝だ」と勇吉が濁酒の茶碗に口をつけた。「云うことに嘘はねえが、どうにも毒があっていけねえ。なか(廓)へいってまでその伝なんだから、妓にだって好かれる道理がねえや」

旅装の客は与平を見た。

「いま向うで」とその客が上方訛りのある調子で訊いた。「向うにいる人が、お幸さんがどうとかしたっていったようだが」

「へえ」与平が顔をあげた。「――なんで」

「いや、いま向うの人が」

旅装の客はそう云いかけて、ふと口をつぐんだ。この葭簀張りの中へ、女が一人ふらふらと入って来た。