Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
「いいえ、はじめてです」
顔のオデキをかくそうとしてベタベタと塗り立てたのか、おかしい位こってりと厚化粧した女は、安白粉の匂いをプンプンさせながら、小沢の傍に掛けると、
「――おビール持って来まひょか」
大阪弁を使っているが、アクセントは上方のそれではなかった。どこからか大阪へ流れて来た女らしい。
「いや、いらん」
食堂だと思ったが、夜はカフェに変るのだろうか、いや、朝っぱらからもうカフェじみているわいと思いながら、小沢はぶっ切ら棒に断ったが、ふと思い出して、
「――それより、にぎりを持って来てくれ」
十五円のライスカレー一皿では、腹が一杯にならなかったのだ。
「にぎり一チョウ!」
「あ、二皿にしてくれ」
と、小沢はあわてて言った。
「――土産にするから、包んでくれないか」
阿倍野橋の宿で待っている雪子のことを、想い出したのである。
雪子も昨夜から何も食べていないのだ。だから、自分で食べるより、雪子のところへ早く持って行って、食べさせてやりたかった。
が、飯はこれで出来たが、著物はどうすればいいのか。
売り払って著物の金にかえる筈だった荷物は、しかし駅でなくなってしまった。