Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme
正香の着くという日の午後、彼は寺の方から引き返して来て、早速家の店座敷に珍客を待つ用意をはじめた。お民が来て見るたびに、彼は部屋を片づけていた。
旧宿場三役の廃止以来、青山の家ももはや以前のような本陣ではなかったが、それでも新たに布かれた徴兵令の初めての検査を受けに福島まで行くという村の若者なぞは改まった顔つきで、一人の村方惣代に付き添われながらわざわざ門口まで挨拶に来る。街道には八月の日のあたったころである。その草いきれのする道を踏んで遠くやって来る旅人を親切にもてなそうとすることは、半蔵夫婦のような古い街道筋に住むものが長い間に養い得た気風だ。
お民は待ち受ける客人のために乾して置いた唐草模様の蒲団を取り込みに、西側の廊下の方へ行った。その廊下は母屋の西北にめぐらしてあって、客でも泊める時のほかは使わない奥の間、今は神殿にして産土神さまを祭ってある上段の間の方まで続いて行っている。北の坪庭も静かな時だ。何げなくお民はその庭の見える廊下のところへ出てながめると人気のないのをよいことにして近所の猫がそこに入り込んで来ている。ひところは姑おまんの手飼いの白でも慕って来るかして、人の赤児のように啼く近所の三毛や黒のなき声がうるさいほどお民の耳についたが、今はそんな声もしないかわりに、庭の梨の葉の深い陰を落とし