Japanische Klassiker mit Furigana
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おとなのめとこどものめ
大人の眼と子供の眼
水上 滝太郎
Lesen Sie 大人の眼と子供の眼 (おとなのめとこどものめ) von 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.719 Zeichen · 10 Bildschirme
しかし権兵衛さんは、頬髯に埋まった青白い顔に、陰性の凄い眼を光らせて睨みつけるばかりで、微笑を浮かべた事さえなかった。
「権兵衛が種蒔きゃ鴉がほじくる……」と子供はくやしがって、馬車のうしろから追いかけながら、はやし立てるのがおきまりだった。
だが、自分がここに記そうとするのは、権兵衛さんの面影ではなく、同じくその往来の出来事で永く心に残って忘れられない白馬に乗った人の事なのである。それを、子供の眼が、いかに実際あるよりも美しく見るものかという例証のひとつにしたいのである。
夏の日の事である。門前で遊んでいると、遠くから埃をあげて、まっしぐらに白馬をかけさせて来る人があった。西洋の狩猟の絵に見るような黒い鳥打帽子をかぶり、霜降の乗馬服に足ごしらえもすっかり本式なのが、鞭は手綱と共に手に持って、心持前屈みの姿勢を崩さず、振向きもせずに通り過ぎた。僅か一瞬間の事であったが、子供の眼には仰ぎ見る馬上の姿が、天かけるように聳えて高く見えたのである。
「いいなあ。」
子供は一せいに感心して、見る見る町角に消えて行く白馬の行方を見送った。
「おいらも今にあんな馬に乗っかるんだ。