Japanische Klassiker mit Furigana
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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
Lesen Sie 大捕物仙人壺 (おおとりものせんにんつぼ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.606 Zeichen · 97 Bildschirme
木戸を開けると裏庭で、柘榴の花が咲いていた。
「寄っておいで、構やしないよ」
「いいえ不可ませんわ、そんなこと」
二人は優しく争った。
やっぱり女は帰ることにした。一人で櫓櫂を繰って紫錦は湖水を引き返した。
どこか、裏庭の辺りから、口笛の音の聞こえてきたのは、それから間もないことであった。
「今時分誰だろう?」
楽しい空想に耽りながら、いつもの寝間の離座敷で、伊太郎は一人臥っていた。
ヒューヒュー、ヒューヒューとなお聞こえる。
と、コトンと音がした。庭に向いた窓らしい。「はてな?」と思って眼を遣ると、障子へ一筋縞が出来た。細目に開けられた戸の隙から月光が蒼く射したのであろう。
「あ、不可ない、泥棒かな」
すると光の縞の中へ、変な形があらわれた。
長い胴体、押し立てた尻尾、短い脚が動いている。と思った隙もなくポックリと障子へ穴があいた。
颯と部屋の中へ飛び込んで来た。
「鼬だ」
と伊太郎は刎起きた。「誰か来てくれ、鼬だ鼬だ!」
ぼんやり点っている行燈の光で、背を波のように蜒らせながら伊太郎目掛けて飛び掛かって行く巨大な鼬の姿が見えた。
母屋の方から人声がして、母を真先に女中や下男が、この離へやって来た時も、なお鼬は駆け廻っていた。