Japanische Klassiker mit Furigana
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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
Lesen Sie 大捕物仙人壺 (おおとりものせんにんつぼ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.606 Zeichen · 97 Bildschirme
母のお琴はそれと見ると、棒のように立ち縮んだ。
「鼬!」と顫え声で先ず云った。「口笛の音? ああ幽霊!」
それからバッタリ仆れてしまった。
お琴は気絶したのである。
鼬の姿はいつか消え、遠くで吹くらしい口笛の音が、なお幽に聞こえていた。
3
「私は現在見たんでさあ。嘘も偽わりもあるものですかい。ええええ尾行て行きましたとも。するとどうでしょうあの騒動でさ」
楽屋へは朝陽が射し込んでいた。人々はみんな出払っていて、四辺はひっそりと静かであった。女太夫の楽屋のことで、開荷、衣桁、刺繍した衣裳など、紅紫繚乱美しく、色々の物が取り散らされてあった。
「でも本当とは思われないよ。そんな事をする人かしら?」
「恋は人間を狂人にしまさあ」
「だって妾あの人に対して何もこれまで一度だって……それに妾達は従兄妹同志じゃないか」
「従兄妹であろうとハトコであろうと、これには差別はござんせんからね。……私はこの眼で見たんでさあ」
「だってそれが本当なら、あの人それこそ人殺しじゃないか」
「だからご注意するんでさあね」
「ただの鼬じゃないんだからね」
「喰い付かれたらそれっきりでさあ」
「恐ろしい毒を持っているんだからね」