Japanische Klassiker mit Furigana
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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
Lesen Sie 大捕物仙人壺 (おおとりものせんにんつぼ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.606 Zeichen · 97 Bildschirme
「別に変った壺でもないが」
すると座に居た尚古堂が「拝見」と云って受け取った。
尚古堂は本姓を本居信久、当時一流の好事家で、海舟の屋敷へ出入りをしていた。
じっと壺に見入ったが、
「や、これは仙人壺だ!」驚いたように声を上げた。
「仙人壺だって? 妙な名だな。古事来歴を話してくれ」海舟はこう云って微笑した。
「宋朝古渡りの素焼壺で、吉凶共に著しいもの、容易ならぬ器でございます」尚古堂は気味悪そうに云った。夜な夜な音を発するのは、焼の加減でございまして、質の密度が夜気の変化で動揺するからでございます。これは不思議でございません。ちょうど茶釜が火に掛けられると、松風の音を立てるのと、全く同じでございます。……が、この壺には世にも怪しい、一つの伝説がまつわって居ります。よろしければお話し致しましょう」
「聞きたいものだ、話してくれ」海舟も延太夫も膝を進めた。
「では、お話し致しましょう」
尚古堂は話し出した。
戦国時代の物語である。
甲州には武田家が威を揮っていた。その頃金兵衛という商人があった。いわゆる今日のブローカーであった。永禄四年の夏のことであったが、小諸の町へ出ようとして、四阿山の峠へ差しかかった。