Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.962 Zeichen · 145 Bildschirme

Aozora Bunko

家畜でなくて野獣のうちです。野獣のうちの猛獣に属するものです。しかも、猛獣のうちでも、獅子と虎とを有せざる日本の国に於ては、最強最大の猛獣といってよい種類に属しているものでありました。

「熊の野郎!」

米友は眼を円くしたけれども、むくむくと肥え太ったこの猛獣の子供を見ると、恐怖よりは可愛らしさの念に打たれないわけにはゆきません。月の輪や、羆の類が襲い来ったとしたならば、心得たりと、体をかわし、咄嗟には杖槍を七三に構えて、「さあ、かかってみやがれ」と、胆を据えるべき米友も、こんな可愛らしい部類に属する子熊に、じゃれつかれてみると、一応は、びっくりしたが、これを憎み扱う気にはなれません。

ましてや、この肥え太った動物は、米友の寝ている腋の下へくぐり込んで、鼻を鳴らし、身をすりつけて、じゃれかかって来る有様は、たしかに自分を他人とは見ないで、なつかしくて、懐かしくて堪らないでやって来た風情であります。

おそらく、久しぶりで、ムク犬に逢うたならば、あの犬は、これと同じようにして、自分にすりついて来て離れないに相違ないが、これはこれ、ムクでないことは確かで、米友としてはまだ、こうして、夜這にまで来られるほどに、熊という猛獣族の中に、馴染をもっているとは思い出されないのです。