Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 254.021 Zeichen · 495 Bildschirme
怪しいものであります。ことに、この捨てられた子が、因果におとなしい子でありまして、一旦は咽び泣いたり、また号泣したりしましたけれども、暫くすると、ひとりまたいい機嫌になって笑い出しました。大空にちんくるちんくるとまたたく星の光を見て――人間が笑い得るには、幼な児といえども相当の余裕を持っていなければ笑えない。相当の余裕とは要するに衣食の余裕です。
今、ここに棄てられた子は、衣に於て充分の凌ぎをもっている。時季によっては、いかに衣服が足りても、深夜こうして夜風に曝されることに堪え得るはずはないのですが、今は何といってもまだ秋です、衣は寒を防ぐに足り、食は――棄てられる前に、たっぷりと因果が含ませてあるに相違ない上に、傍にまた徳利へ乳首をつけて、その時分はミルクはなかったとして、摺粉か、上粉か、そんなものを甘くして、優に一昼夜の吸引に堪え得るようにしてある。だからこの棄子は衣食が充分に足りて、そうして笑うの余裕を得ている。
だが、こういう人生のきわどい笑いがいつまで続く?
棄てられた子の泣くのは悲惨だけれども、笑うのはなお一層の悲惨です。慈善の人があって、手に取上げるまで泣かして置くのはよろしいとして、それまで笑わせて置くことは、むしろ堪え難いことです。