Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 254.021 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

母なる人は、鼓楼の蔭あたりで、一刻も早く温かなる手の拾い主を期待していたのだが、容易に人の視聴を聳てないことほど、この棄てられた子がおとなしい子でありました。

むしろ、火のつくほど泣き叫んでくれたならば――遥か彼方を通る夜廻りの者か、寺の庫裡の料理番か何人か、夢を醒す人もあろうのに、いい機嫌で笑い出されてしまったのでは、とりつく島がない。

もう、たまりかねて、母親が自分の手で回収に出かけたものです。ただ、その母親が子を捨てるほどの母の姿としてはいささか異様に見えないではありません。白衣ははじめからわかっているが、近づくに従って熟視すると、髪はうしろへ下げ髪に、その上へ鉄輪を立てて、三本の蝋燭が燃えている。足は跣足です。それから首に鏡のようなものをかけている。

右の女が、ちょこちょこと鼓楼の下から小走りして、玄関の松の下まで来ましたが、思い余って、いきなり、わが子を入れた籠に飛びつくかと思うと、存外、冷静でありました。

その冷静ぶりは、むしろ、捨てたわが子の籠を目的としないで、そそり立つ松の大木の幹へでも抱きついてみたいというような気分で走りかかったことも、不思議の一つでしたが、籠の直ぐ一歩前、ちょうど松の大木の幹の下へ来てみると、そこで、いきなりわが子へ飛びつきもしないし、頬ずりもしないで、何か事の不思議