Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
それですから、いよいよ過ぐる日の武者修行も、思わざる所で、ひょっこりとお松の出現に驚き、それを大菩薩峠の上に移して、話に花を咲かせたと見れば見られないこともありません。
そういった場合、お松自身には、そんなきどり方はないとしても、こういった山里で、ひとたびは京の水にもしみ、ひとたびは御殿づとめもした覚えのある妙齢の娘が、不意に、木の間、谷間から現われ出でた時は、少なからぬ驚異を誘うのも無理のないことであります。
そんなところからお松の生活を見れば、詩にもなり、絵にもなりましょうが、お松自身にとっては、この頃ほど自分の現在というものに、喜びを感じていることはありません。
人の現在を喜ぶのは、多くの場合、過去の経験を忘れ、未来の希望を捨てた瞬間の陶酔に過ぎない浅薄な喜びになり易いが、お松のは、たしかにそうでなく、もはや、自分の立つ地盤の上に、この上のゆらぎは来ないだろうと思われるほど、自分ながら堅実を感ずるの喜びでありました。
人生、喜びを感じない人はあるまいが、またその喜びの裏に、不安を感じないという人もありますまい。
喜びが大きければ大きいほど、後の不安が予想される喜びに住みたくはないものです。