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Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

独身のさびしさを心に悩む男は、淫婦を見ようとも、針を持つ女を見てはいけない。だが、安心してよいことには、お雪ちゃんがこうして針を持っているところを、誰ひとり見ている者はないし、お雪ちゃんとても、誰に見せようとの心中立てでもなく、無心に針を運んでいるうちに、無心に歌が出て来る。心無くして興に乗る歌だから、鼻唄といったようなものでしょう。

それはお雪ちゃんが、名取に近いところまでやったという長唄でもない。好きで覚えた新内の一節でもない。幼い時分から多少の感化を受けて来た、そうして日本のあらゆる声楽の基礎ともいうべき声明のリズムに、浄瑠璃の訛りがかかったような調子で、無心に歌われる歌詞を聞いていると、万葉集でした。

このごろ中、心にかけて習っている万葉集の中の歌が、そこはかとなく、例の声明と、浄瑠璃のリズムで、お雪ちゃんの鼻唄となって、いわば運針の伴奏をなして現われて来るらしい。

巌すら

行きとほるべき

ますらをも

恋てふことは

後悔いにけり

これだけはリズムの節調ではなく、散文の口調で、すらすらと口をついて出でました。

なぜか、お雪ちゃんはこの歌が好きです。