Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
十里百里と興に馴れて自然そのものに直接に没入して行きさえすれば、自然は惜気もなく、その無尽蔵を開いて、永遠の画題を我等に与うるのだ。
「おれは仕合せ者だ!」
白雲は、こういう瞬間には、かく自分の身の恵まれたることの讃歌を、誰はばからず絶叫するの稚気を有している。
この稚気が存する間、妻は病床に臥すとも、子は飢えに泣くとも、存外、のんき千万で生きて行かれる!
「ああ、いい気持だ」
こう言いながら、白雲は松林の間を、縦横に歩いて行くと、ふと、人の声がする。一町とは隔たるまいところで……やはりこの松林の中で、松の木の下で、極めて平凡な人間の声が起るのを聞きました。
海も、海岸も、松林も、ここは自分ひとりの専有と信じていたのに、人がいる。極めて、あたりまえの人間の声がする。その声は尉と姥との声でもなく、寿老神が呼びかけたのでもない、あまりにあたりまえ過ぎる人間の声でありましたから、不意であったとはいえ、白雲を驚かすには足りないで、かえって、それに拍子抜けの思いをさせました。
「なあんだ、人がいたのか」
それは軽蔑でもないし、憤怒でもない。極めて軽い意味の失望の程度のものでありました。