Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
あちらの枕屏風の外から、中を見透すようにして米友がこう言いました。
この屏風の向うに、尋常に一組の夜具はのべてあるけれども、その中はもぬけの殻だということを、米友は最初からちゃんと見抜いていたのであります。
「ちぇッ! 世話が焼ける奴等だなあ!」
なぜか、米友はこう言いつつも、お雪ちゃんの寝顔をまたながめ直した途端、
「ジュー、シープー」
という只ならぬ物音が、さいぜんのあの炉辺で起りましたので、米友がまた、とつかわと突立って、今度は、枕と、屏風と、水差とを突破して、もとの炉辺へ向って一直線に走りつけたのは、なるほどいそがしい。全く世話の焼けた話で、こちらの救急と、看護と、思いやりで手も足らないでいるところへ、あちらの一間で「ジュー、シープー」という只ならぬ物音。さながら、「雨は降る降る干物は濡れる、背中じゃ餓鬼ゃ泣く飯ゃ焦げる」というていたらくです。
四十七
その「ジュー、シープー」という只ならぬ物音は、それは人間の声ではないが、捨てて置けない。こうなってみると予想しないことではなかった。つまり、炉中へかけっ放しにして置いた鉄瓶が、燃えさしの火力に煽られて、米友の不在中に沸騰をはじめ、それが下の炉炭中へたぎり落ちて灰神楽を始めたのですから、このことは人の生命に及ぼすほどのことではなかったの