Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
「いや、いや、いやでございます、あなたばっかりは逃げようとなすっても逃がすことではありません、少しは、わたしの身にもなって考えてごらん下さいましな」
兵馬は長火鉢のこちらで、いかんとも致しようがなく、福松の振舞をながめているばかりです。
「わかっておりますよ、あなたもこの高山の土地を離れようという思召しで、それとなく御挨拶においでになったのでしょう、思召しは有難うございますけれど、わたしの身にもなって……ごらん……下さいましな」
斯様な手は、斯様な女にはよくありがちの手でありますけれども、ありがちの手にしてからが、今日のは、この女の用い方に、少し当りが違い過ぎ、薬が強過ぎるようなところがあります。
涙を惜しげもなく、ほろほろとこぼして泣きわめきながら、武士の腰のもの二つを鋸で引いても放さないような意気込みで、しっかりと抱え込んで、
「ほんとうに……わたしの……わたしの身にもなってごらん下さいましな」
と、ここで、また繰返言を言うて泣きじゃくりながら、
「新お代官の御前があんなことになったのは、わたしから見れば、自業自得ですわ、大きな声じゃ言われませんけれど、いい気味ですわ、あんな奴、ああなるのがいい見せしめで、内心、溜飲が下るように思ったのは、わたしばかりじゃございますまい――ですけれども、あの飛ばっちりを浴び