Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.954 Zeichen · 24 Bildschirme
河の中の綾麿は、必死と泳ぎ続けました。浮標の代りの仏像を抱いているにしても、羽織袴の花聟姿では、いかにそれはペンペラの夏物であったにしても、あまり泳ぎいい恰好ではありません。
それにも拘らず、綾麿はよく泳ぎ続けました。吾妻橋の上から見られないように、時には潜ったり、水に身体を任せたり、三十分ほどの後には、それでもどうにかこうにか、駒形堂の下手に泳ぎ着いて居りました。
其処から阿部川町の自分の家まで、グショ濡れの紋付を着た花聟が、観音像を抱いて駈けて行く姿は、一体どんなに奇っ怪なものだったでしょう。
幸い夜を警める羅卒にも逢わず、漸く阿部川町の家に辿り着いた綾麿は、綿の如く疲れて居りました。格子を開けて轉げ込むと、
「おう、綾麿兄哥か、冗談じゃないぜ」
迎えてくれたのは、友吉でした。胸のすくような江戸っ児で、お旗本の若様の綾麿とは、不思議に馬の合う友吉だったのです。
「友吉兄哥、嫁御はどうした」
「驚くぜ、おい、濡れ鼠になって、仏様を抱いて来る聟を、何処の嫁が神妙に待って居るものか。お袋がカンカンに腹を立てて、綿帽子のまま引摺って行ったよ」
「済まなかったなア――だが俺はこの仏様が焼かれると聴いては、どんな事があっても放っては置けなかったんだ。