Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.954 Zeichen · 24 Bildschirme
その時十六になったばかりの香折の美しさは、大衆文芸のあらゆる辞彙を動員しても追い付くことではありません。
江戸っ子らしい愛くるしさ、眼が大きく、鼻が高くて、少し受け唇で、鼻の下が詰って、下っ張れで――と申したら、皆様はよく下町型の美しい、少しばかりお侠な娘の様子を想像して下さることでしょう。
綾麿と香折の他には、十八九から二十歳を越したのが四五人、例の一瓢を空っぽにした元気で、威勢よく蠑螺堂の頂上に駈け登って、大ふざけにふざけながら、四方の景色を眺めて居ります。
三月中ばの生温かい陽は廊下一パイに射して、百体の観音様が、燦燗と照らし出された中に、一番遅れた綾麿はフと足を留めました。眼の前にあるのは、忘れもしない天狗長兵衛作の聖観音菩薩、春の夕陽を一パイに受けて、曾て十年前に、乳母に抱かれて来た時と、少しも変らぬ艶麗無比な御姿です。
そっと四方に眼を配ると、幸いそこには誰もいません。綾麿は早鐘を打つような胸を犇と押えて、蓮座の下の段にそっと足を掛けました。どんな熱烈な初恋でも、これほどまでに刺戟的な誘惑は感じなかったでしょう。綾麿の頬は不可抗力に操られて、勿体なくも観音様の、夕陽に燃ゆる金色の頬へ、そっと触れてみたのです。