Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme
六
自分の心――悪魔的な真っ黒な心を幽里子の澄み切った心の鏡に映されたような気がして、いてもたってもいられない心持になったのです。
が、その間の悪さも漸く救われました。廊下を近づく足音――母親か看護婦かはわかりませんが、誰やらがこの退っ引ならぬ場面へ来た様子です。
六
その晩、東野南次は、ビルディングの屋上に出て、少し朧に昇った月を眺めておりました。
ビルディングは五階で、大して高くはありませんが、天気さえ良ければ、富士も見られ品川の海も眺められます。
宵の街は灰紫色に淀んで、車の灯が右へ左へ流れ、巷の雑音は不思議な不協和音を湧き立たせて、妙に引入れられるような心持にさせるのでした。
高層建築の誘惑――いつか東野南次は、そんなコントを書いたことがあります。それは百尺近い屋上庭園にいると、平静な心持をもった者でも、ツイ死の淵の口を覗いて見たいような、異様な誘惑を感ずることがある――といった筋です。
東野南次は今まさに、その死の淵の口を覗いているのでした。
東野南次は、この時ほど自己嫌悪を感じたことはありません。自分はまさか人を殺す気になろうとは、生れてから今まで、想像もしたことは無かったのです。