Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme
それも造化の素晴らしい傑作、美しい処女の中の処女といってもいい、あの清らかな幽里子を、自分の情慾のために殺そう――と単に考えただけでも、それは実に身の毛のよだつ恐ろしさです。
これでは半沢伝次――あの一番愚劣なヨタ者と、何の違いがあろう。
死――東野南次はフとそんな事を考えておりました。この悔恨と、自己嫌悪を救うものは、死より外には無いような気がするのです。そしてこの屋上庭園から身を躍らせて、灰紫色の闇の中に飛込みさえすれば、それで万事が終結するのだ。
「幽里子さん、左様なら――貴女の恋人と幸福に暮して下さい、左様なら」
東野南次は、二階の病室のあたりへこの別れの言葉を投げると、少し早足で、屋上庭園の胸壁に近づいたのです。
一瞬の後、落魄の小説家東野南次は、その浅ましい死骸を、裏銀座の街上に横たえる運命でした。真に一瞬の後、――が
「東野さん――いらっしゃいます?」
「――――」
「東野さん、一寸申し上げたいことがありますが」
五階の廊下、自分の部屋の前で叫んでいるのは、幽里子の母親の礼子ではありませんか。
「ハイ、ハイ、唯今参ります。あまり月が良いので」