Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.447 Zeichen · 21 Bildschirme
「ま、お前も」
姫は走り寄ると、そのまま命の最後の灯を燃やし尽くして、大地の上に崩折れそうな男の手を取ったのでした。
将軍家斉の娘が、餓えて焦れて死にかけている痩浪人の手を――、それはもう夢ではなく、凄じいほどの真実性を持った現実です。
「有難う御座います、姫君様、村松金之助生まれて始めての生き甲斐で御座います」
村松金之助は、木戸の柱に縋り付いたまま、命を絞るような涙を流しているのです。
数年前に死んだ父家斉と、六つかしい白髪頭の家来達の外に、男というものを見たことの無い京姫は、この不思議な男――何時ぞやの闖入者、――小柄で綺麗で、男人形のように清潔な感じのする村松金之助を今の今まで忘れずに居てくれたばかりでなく、気に染まぬ婚礼話の進行中に、ほのかなそして邪しまな記憶と、次第に募る思いをさえなつかしんで居たのでした。
京姫はあまり物を言いませんでした。がその月に照らされて美しい顔の表情は、如何なる言葉よりも雄弁に、瀕死の村松金之助の眼に、並々ならぬものを焼付けたのです。
「お姫さま、――私は夢ばかり追って居りました、斯んな事とも存ぜず」
「――――」