Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
一の三
一の三
おなつはこのあいだ見た夢を思いだした。正二郎がせっせと地面を掘っている、――この中にいい物がある、みんなおまえにやると云う。水の湧きだすその穴の中から、一朱銀がざくざく出て来た。うれしさに胸がどきどきし、これでお米も買えるし母さんのお薬も買えると思った。
おなつの生れて育った組長屋は、願成寺という寺のある丘の崖下にあり、片方がかなり広い草原になっていた。昔は馬場だったそうであるが、その草原の向うに矢竹倉と並んで、牟礼という珍しい姓の、重臣の大きな屋敷があった。どういう役のひとかは知らなかったが、正二郎というひとり息子がいて、高塀の裏の木戸から出て来ておなつと遊んだ。年は一つくらい上だったらしい、色白のまる顔で、いい着物を着て上品な口をきいた。
彼はこちらを『おなつ』と呼び、おなつは彼を『正二郎さま』と呼んだ。彼には妹が一人あり、それは幼いうち亡くなったそうで、その妹の使った玩具をよく持って来て呉れた。たいてい人形遊びの道具などであるが、おなつのよろこぶのを見るのが嬉しいらしい。
――いまに正二郎がね、大きくなったらね、おなつに家を造ってあげるよ、お庭のある広い大きな家をね。