Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
三の二
「ああそうだったの」妻女は明らかに心うたれたようすだった。けれどもすぐ明るい調子にかえり、わざと手荒く背をながした。
「こんなことで喜んで貰えるならいいわね、うちの娘に頂いてゆこうかしら、ねえなつさん、あなたわたくしたちの娘になる気はなくって」
「勿体ないことをおっしゃいます、どうぞもう、お願いでございますから」
おなつは相手の気持がよくわからず、そのうえ泣いたりした恥かしさで、風呂を出るまで三枝夫人の顔が見られなかった。
――その夜、夫婦が帰って、いつもより早く寝間へさがってから、おなつはなかなか眠ることができず、いつまでもいつまでもまじまじともの思いに耽っていた。
三の二
風呂で自分の体をためすように見た、あの妻女のまなざしはなんの意味だったろう。いきなりうちの娘になれなどと云ったがそれには何かわけがあったのか、それともこちらをからかっただけだろうか。
――少しも悪意は感じられなかった。からかって嗤うようなふうはみえなかった。……でもそれならあの眼はなんだろう。あの言葉はどういうつもりだったのだろう。
ずっと更けるまで、おなつは堂々めぐりをするように、同じことをいつまでも考え続けていた。