Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
四の一
四の一
夜明けが近いのだろう、気温がにわかに下ったようで、幾らかき合せても衿元が寒く、ふとすると激しく身がふるえた。
体のなかは燃えるようだ。頭も火のように熱い、それでいて顫えるほど寒い。おなつは手指を額で温めながら手紙を書き終り封をすると、追われるような気持で立ちあがった――。そうして裏木戸からぬけ出すつもりで、障子をそっとあけるなり、ああと叫んでうしろへよろめいた。そこに精之助がいたのである、寝衣のままでしんと立ってこちらを見ていた。
「――そこにあるのは置き手紙だね」
彼はこう云って小机の上を見やった。
「――焼いておしまい、もう不必要だよ」
おなつは息が詰るように思った。舌が硬ばってなにも云うことができず、ただ相手の眼を見つめたまま立竦んでいた。精之助は微笑し、頷きながら、劬るように云った。
「話すことがある、こっちへおいで」
おなつは意志を失った者のように、頭を垂れてついていった。精之助は居間へはいり、そこへお坐りと云って、自分の机からなにか取って来た。そうしてさし向いになると、持って来た紙をそこへ出して、やはり静かに微笑しながら云った。
「もうあの家へ帰る必要はないんだ。