Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

、あの方があたしを想って下さるのは、少しも嘘のないきれいな、まじりけのないものよ、――だからあたしにはできないの、初めのいやらしい汚い気持さえなかったら、どんな無理をしたってお側へゆくわ、でもあたしにはできない、……いちばん初めの卑しい気持は、どうしたって自分でゆるすことができないのよ」

おなつは袂で顔を掩い、声を忍ばせて泣きいった。そうして苦痛を訴えるもののようにくいしばった歯のあいだから、絶え絶えにこう云った。

「ひろい世の中で想い想われ、愛し愛されるということは、それだけで美しい、きれいな、尊いものだと思うの、それだけはよごしてはいけないと思うの、――あたし独りで生きるわ、あの方に愛して頂いたこと、これまで愛していて下すったこと、それだけで生れて来た甲斐があるわ、あたし独りで立派に生きるの、あの子をあの方のお子らしく立派に育てるわ、……それがそれが、たったひとつの――」

そこでおなつの言葉が切れた。それが唯一の贖罪という意であろうか。それとも愛の証といいたかったのだろうか、――言葉はそこで切れたまま、おなつは崩れるようにそこへ泣き伏してしまった。