Japanische Klassiker mit Furigana
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おんなごころしゅうい
女心拾遺
矢田 津世子
Lesen Sie 女心拾遺 (おんなごころしゅうい) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.514 Zeichen · 36 Bildschirme
四
十一月もまだ初旬だというのに、この朝夕は肌身を刺すような寒気がつづいて、葉を落した背戸の柿の木には、朱く熟れた実がうっすらと霜をかぶって四つ五つ、寒む風にゆれている。
茶の間にはもう掘炬燵がしつらえられて、老夫人は此処を自分の居場所と決めて痛む脚を温めている。
「こんなに寒くなっては体にこたえるだろうな。どうだ、名医をつれて暫く片瀬へ行ってみたら……」
炬燵を離れぬ夫人を見かねてか、唐沢氏はいつもの優しい口調でこんな風に勧めるのだった。その言葉を今の夫人は以前のように素直な心で受け取ることが出来ない。良人とおしもを残しては家をあけられぬ、と警戒する気もするからであった。朝、外出の仕度をさせるのに、おしもをわざわざ奥の居間へ呼ぶのも巫山戯るためかと疑い、夜分、寝室で頭を揉ませているのさえ不安な思いで、時折りお春を覗かせにやる。そんな自分の思いまわしを不快に思いながらも悪い想像に心が蝕ばまれていくのをどうすることも出来ない。そして、いつに変らぬニコニコ顔のおしもを見ていると、挑みかけられているような気がしてきて身内がかっかっと熱し、ふと、自分もまた小娘の感情に還って剥き出しに挑みかけているのに気付く。