Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
Lesen Sie 好人物 (こうじんぶつ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.609 Zeichen · 107 Bildschirme
今日は然ういう気の長い奥さんが二人お揃いになって、殊に何を買うのか方針が定っていないのだから、日が暮れるかも知れない。
「奥さん、一寸、この煙草セットは如何でございましょう?」
と安子さんが硝子箱の中を物色して相談をかければ、
「好い細工ね」
と内藤夫人は能く透して見た末、
「あらまあ! 百二十円よ」
と吃驚する。
「まあ、百二十円ね。銀ですわ。私は錫の積りだったの」
「錫ぐらいのものよ。猿虎蛇のお礼に銀は過ぎますわ」
「ホヽヽ、お口が悪いのね。それじゃ矢っ張りあの茶器に致しましょうか?」
「然うねえ。けれども余り安物を持ち込むのも考えものよ。田舎の人は直ぐに値踏みをしますからね。吝だと思われちゃ業腹じゃありませんか?」
といった具合で、要するに好いものは高く安いものは悪い。それを安くて好いものが欲しいのだから、勢い彼方此方と尋ね廻らなければならない。
折からお節句で五月人形の陳列があった。それへ差しかゝった時、内藤夫人は歩を止めて、
「奥さま、橋口さんではこの春、男のお子さんがお生れになりましたわね?」
と訊いた。
「はあ、男のお子さんでございますのよ」
と安子さんは質問の意味を察して陳列場の方へ目をくれた。