Japanische Klassiker mit Furigana
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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme
は今どこにいるんだね。そして、名前は何とかいったね。君は忘れちまったんじゃあるまいね」
「馬鹿云ってら。『お父つぁん』の名前を忘れるもんか」
「じゃ云って御覧。何といったっけな。伯父さんは胴忘れしてしまったんだよ。さあ云って御覧。ホラ、そうすれば、このお陽さまの様に美しいチョコレートの罐がお前のものになるんだよ」
この子供に対して、チョコレートの罐は、まるで魔法みたいな作用をした。彼は、丁度大人達が莫大な黄金の前には、凡ての危険を顧みないのと同じに、このチョコレートの罐の魅力に、何事をも忘れてしまう様に見えた。彼は今にも諸戸に答えそうな様子を示した。その刹那、異様な物音がしたかと思うと、諸戸は「アッ」と叫んで、子供をつき離して飛びのいた。変てこな、あり相もない事が起ったのだ。次の瞬間には、友之助はそこの絨氈の上に転っていた。白い水兵服の胸の所が、赤インキをこぼした様に、真赤に染まっていた。
「蓑浦君危い。ピストルだ」
諸戸は叫んで、私をつき飛ばす様に、部屋の隅へ押しやった。だが用心した第二弾は発射されなかった。たっぷり一分間、私達は黙ったまま、ぼんやりと立ちつくしていた。