Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme

Aozora Bunko

「分る? 私今、何をお返しにすればいいかと思って、心配していたのよ。指環なんて、私買えないでしょう。でも、いいものがあるわ。ホラ、いつかもお話した私の知らないお父さまやお母さまの、たった一つのかたみの、あの系図書きよ。私大切にして、外出する時にも、私の御先祖から離れない様に、いつもこの手提に入れて持っていますのよ。でも、これ一つが私と、どっか遠い所にいらっしゃるお母さまを、結びつけているのかと思うと、どんなことがあっても、手離す気がしないのだけれど、外にお贈りするものがないのですから、私の命から二番目に大切なこれを、あなたに御預けしますわ。ね、いいでしょ。つまらない反古の様なものですけど、あなたも大切にしてね」

そして、彼女は手提の中から、古めかしい織物の表紙のついた、薄い系図帳を取り出して、私に渡したのである。私はそれを受取って、パラパラとくって見たが、そこには、昔風な武張った名前が、朱線でつらねてあるばかりであった。

「そこに樋口って書いてあるでしょ。分って、いつか私がタイプライターでいたずらしていて、あなたに見つかった名前、ね、私木崎っていうよりも、樋口の方が本当の私の名前だと思っているものですから、あの時、あなたに樋口って呼ばれて、つい返事してしまったのよ」