Japanische Klassiker mit Furigana
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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme
入口のない部屋
私恐いものだから、それに暗いので、よく見なかったけれど、でも、私の家の軒燈の光で、チラッと口の所だけ見てしまったのよ。上唇が丁度兎のように二つに割れていて、私と目を合わせた時、てれ隠しに、ニヤッと笑った口と云うものは、私今でも思い出すと、寒気がする様よ。あんな化物みたいな、八十以上にも見えるお爺さんが、しかも夜更けに、三度も私の家の前に立止っているなんて、変ですわ。ねえ、何か悪い事の起る前兆じゃないでしょうか」
私は初代の唇が色を失って、細かく震えているのを見た。余程怖かったものに相違ない。私はその時無理にも、彼女の思過しだと云って、笑って見せた事であるが、仮令この初代の見た所が真実であったとしても、それが何を意味するのか少しも分らなかったし、八十以上の腰の曲ったお爺さんに危険な企らみがあろうとも思えなんだ。私はそれを少女の馬鹿馬鹿しい恐怖として、殆ど気にも止めなかったのである。だが、後になって、この初代の直覚が、恐ろしい程当っていた事が分って来たのであるが。
入口のない部屋
さて、私は大正十四年六月二十五日の、あの恐ろしい出来事を語らねばならぬ順序となった。