Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうえいふんか
宝永噴火
岡本 かの子
Lesen Sie 宝永噴火 (ほうえいふんか) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.505 Zeichen · 62 Bildschirme
その主な章はざっとこうである。
――若い聖者は寺の縁へ出てふと、富士を眺めた。寺は東海道原駅に在った。駅から富士は直ぐ眼の前に見える。富士の裾野は眼で視ただけでは両手を拡げる幅にも余った。その幅も、眺めるうちにだんだん失われた。聖者は眼を二つ三つしばだたいた。すると、しずしずと身の周囲に流れるものがあって、それは雲だ。何の触覚を与えない雲は、聖者を周囲から閉じ込めて、とうとう白一色だけが聖者の視覚の奥に感じられた。間もなく聖者は自身の存在感を失って、天地にただ真白く、肉のようにしねしねした質の立方体だけが無窮に蔓こっていた。どこからそれを眺めて居るのか、眺めている自身がその白さなのか、はっきり判らぬ。聖者は訝かって「慧鶴(聖者の法名)!」「慧鶴!」と自分の名を二声、三声呼んだ。すると音もなく飛びすさるものがあって、数歩の前に富士が、くっきり、雪の褶の目を現わして聳え立った。それから、聖者はまた、二つ三つ、眼をしばだたくと、聖者の眼に富士はいつも寺の縁から眺められる距離感に戻って、青空に匂った。――
これを読みながら不幸を私に齎らしたのは聖者が美しい富士と肉体的にも融け合って、天地はただ白い質のしねしねした立方体だけに感じられたというところだった。