Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
出発の日は、朝早く暖い雨が通過ぎた。長い間溶けずにいた雪の圧力と、垂下った氷柱の目方とで、ところどころ壊れかかった北側の草屋根の軒からは、隣家の方から壁伝いに匍って来る煙が泄れた。丁度、庭も花の真盛りであった。
隣家のおばさんは炊立の飯に香の物を添えて裏口から運んで来てくれた。三吉夫婦は、子供等と一緒に汚れた畳の上に坐って、この長く住慣れた家で朝飯を済ました。そのうちに日が映って来た。お房やお菊は近所の娘達に連れられて、先ず停車場を指して出掛けた。
道普請の為に高く土を盛上げた停車場前には、日頃懇意にした多勢の町の人達だの、学校の同僚だの、生徒だのが集って、名残を惜んだ。そこまで夫婦を追って来て、餞別のしるしと言って、物をくれる菓子屋、豆腐屋のかみさんなども有った。三吉の同僚に、親にしても好いような年配の理学士が有ったが、この人は花の束を持って来て、夫婦の乗った汽車の窓へ差入れた。その日は牧野も洋服姿でやって来て、それとなく見送っていた。
「困る。困る」
とお菊は泣出しそうに成った。この児は始めて汽車に乗ったので、急にそこいらの物が動き出した時は、周章てて父親へしがみ着いた。