Japanische Klassiker mit Furigana
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てらさかきちえもんのとうぼう
寺坂吉右衛門の逃亡
直木 三十五
Lesen Sie 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.243 Zeichen · 19 Bildschirme
吉右衛門は、
(見付かったら、大変だ)
と、思った。そして、鎖鉢巻を懐から出して、泥溝へ投込み、羽織の下の方に縫つけてある合印を手早く剥がして、雪の中へ棄ててしまった。そして物音に、気を配りながら、吉良邸の側を離れた。
(今時分、うろうろしていて、見廻りにでも怪しまれたら大変だ)
と、思って、暗い、軒下へ入って
(その内、大騒ぎとなりゃ、それにまぎれて逃出しゃいい)
手も、足も凍えてきた。手を、懐中へ入れると、内蔵之助のくれた金包に触った。吉右衛門は、紙の上から掴んでみて、
(小粒なら相当にある)
と、思った。そして、掌へ乗せて、重さを考えてみた。
(金にすりゃ十両ほどがとこ、重みがあるぞ)
そう感じると同時に、左右を注意して包を開いてみた。白い銀子が光っていた。十両以上あるらしかった。
(十両くれたって有難くねえや――)
反抗的に、そう考えてみたが、内蔵之助が何故自分にだけ、こんなに別にして多くくれたのか判らなかった。
(人間、金よりは、気持だ。俺ら、一両だっていいから、皆と同じように分けて欲しかったんだ、大高め、四十六といやがった。俺だけ頭数に入ってねえんだ。