Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
なぜかと言えば第一胃が悪くなる、頭が重くなる。こういう点で同様な人はずいぶん多いらしい。それよりもいちばんいやな事は春が来るとこの自分が「悪人」になるからである。
冬の間はからだじゅうの乏しい血液がからだの内部のほうへ集合しているような気がする。それで手足の指などは自分のからだの一部とは思われないように冷え凍えてこちこちしている代わりに頭の中などはいいかげんにあたたかいものがよい程度に充実しているような気がしている。ところが桜が咲く時分になるとこの血液がからだの外郭と末梢のほうへ出払ってしまって、急に頭の中が萎縮してしまうような気がする。実際脳の灰白質を養う血管の中の圧力がどれだけ減るのかあるいは増すのかわからないが、ともかくもそんな気がする。そうしてなんとなく空虚と倦怠を感じると同時に妙な精神の不安が頭をもたげて来る。なんだかしなくてはならない要件を打ち捨ててでもあるような心持ちが始終につきまとっている。それが少しひどくなって来ると、自分が何かしらもっと積極的な悪事を犯していて、今にもその応報を受けるべき時節が到来しそうな心持ちになる。これがもう一歩進むと立派な精神病になるのだが幸いにそこまでにはならない。