Japanische Klassiker mit Furigana
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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.515 Zeichen · 389 Bildschirme
物を言わないで物を言うよりも多くを相手に伝えるこの西洋流のしぐさは、なんでもこくめいに言葉で言い現わしたがるドイツ人には珍しいと思われた。
西洋から帰ってY町に住まってからも歯はだんだん悪くなるばかりであった。ある年の暮れから正月へかけてひどく歯が痛むのを我慢して火燵にあたりながらベルグソンを読んだことがある。その因縁でベルグソンと歯痛とが連想で結びつけられてしまった。彼の「笑い」までが歯痛の連想に浸潤されてしまったのである。
その後偶然にたいへんに親切で上手でぐあいのいい歯医者が見つかってそれからはずっとその人にやっかいになって来たが、先天的の悪い素質と後天的不養生との総決算で次第にかんで食えるものの範囲が狭くなって来た。柔らかい牛肉も魚のさし身もろくにかめなくなり、おしまいには米の飯さえ満足に咀嚼することが困難になったので、とうとう思い切って根本的に大清算を決行して上下の入れ歯をこしらえたのが四十余歳のころであった。上あごの硬口蓋前半をぴったりふたをしてしまった心持ちはなんとも言えない不愉快なものである。しかし入れ歯のできあがった日に、試みに某レストランの食卓についてまず卓上の銀皿に盛られたナンキン豆をつまんでばりばりと音を立ててかみ砕いた瞬間に不思議な喜びが自分の顔じゅうに浮かび上がって来るのを押える