Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme

Aozora Bunko

「あります! たった一つあります!―――さ、御老体、それを引出物に下さい!」

時平はそう云って、愕然としている老人の眼の中を視据えた。

「さ、それを下さい、物惜しみをなさらない證拠に!」

「おゝ、物惜しみをしない證拠に!」

何と思ったか国経は、鸚鵡返しに云った。そして次の瞬間に、座敷のうしろを囲っていた屏風の方へ歩み寄って、それを手早く押し畳むと、御簾の隙間へ手を挿し入れて、中に隠れていた人の袂の端をぐいと捉えた。

「左大臣殿、御覧下さい。―――愚老の命より大切な、天にも地にもかけがえのない物、あらゆる宝物にまさる宝物、愚老の館より外に、何処を尋ねてもない宝物は此れなのです。―――」

今までぐでん/\に酔いしれていた国経は、急に活を入れられたようにしゃんとして立っていた。言葉も呂律が廻らなかったのが、てきぱきした物云いで、りん/\と響き渡るように云った。たゞその大きく見開かれた眼には、何か発狂したような怪しい輝きが満ちていた。

「殿、物惜しみをしない證拠に、これを引出物に差上げます。お受け取り下さい!」

時平を始め満座の公卿たちは一言も発せず、眼前に展開した思いがけない光景に恍惚としていた。