Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
家の裏口へ出ると水田の中に小高くもり上げられた堤防の上を玩具のような汽車が小さな煙の輪を吐いて走ってゆくのが見えた。
家へ着いたのは夕方であった。わたしが裏木戸から入ってゆくと台所の戸が開けっ放しになっていて、電灯の下で胡坐をかいて飯をたべている兄の顔が見えた。
「何だ。玄作か――」
兄は薄闇の中に立っているわたしの顔を透かすようにして見たが、急にわざとらしい笑いを唇の上にうかべながら、
「変な奴だな」
と言った。
兄の前には一人の若い女が坐っていた。兄がわたしに呼びかけた瞬間、彼女が肩をすぼめたのを感じた。それがわたしの来たことをおそれているような印象を与えた。数時間の後、兄の室で始めて引き合わされたときも彼女はそのときと同じ姿勢をしていた。おどおどとしたようにむっちりとした彼女は口を利かなかった。彼女はわたしと同じ歳の十九であったがその初々しい人を避けるような表情のためにずっと若く見えた。彼女の顔の中で一ばん先きに眼につくのはその健康そうな弾力に充ちた小麦色の皮膚であった。眼も鼻も口も、唯それが、眼であり鼻であり、口であるという以外に何の特徴もなかったが、それにもかかわらずある注意をもってこの顔に対していると何かしら静かな力で惹きつけるもののあることを感じないではいられなかった。