Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
七
「とんだことになりましたな。わたしも兄さんとは一面識だけあるんですがね、今度はまたへんな役廻りを命ぜられたわけです」
その男の言葉は、わざとらしい穏かさを含んでいたためにその一つ一つがわたしの胸を突き刺すように響いてきた。それから、彼は、もう一時間ほど経つともう一人ほかの視察員が来ること、二人で徹夜して調べ上げようと思っていること、そして、彼等の使命がわたしたちの生活を脅すような何ものをも含んでいないということを話した。
その男は兄の机に近づいて、無雑作に、其処に置いてあった黒い革の巻煙草入をとりあげた。
七
台所では母と嫂とが近所の人たちにまじって明日の葬式の支度をしているのであった。
ときどき、静かな忍び笑いの声がわたしの寝ている室まで伝わってきた。その笑い声が途切れるとき、じっと耳を澄ますと、事務室でぱちぱちと算盤を弾いている音が、更けてゆく夜の閑けさの中から産れ出るかのようにおごそかに響いてきた。
身体はへとへとに疲れているのに、わたしの神経は痺れたままで尖り立ち、わたしの耳は磁石のようにかすかな物音をも吸い寄せなければ措かなかった。
台所の方にはひとしきり笑い声が続いた。