Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
壁に沿うて敷かれてある蒲団の中に兄の死骸はわたしたちの方に背を向けて横わっていた。頭には白い繃帯がぐるぐるに巻かれてあったが、繃帯のところどころに血の色が黒い汚点を残していた。壁の方を向いて彼の顔は少しの苦悶の様を止めずに口をぽっかりとあけていた。
灰色になった首筋に鳥肌が立っているのを見るとわたしはどきっとしたが、しかし、直ぐにこの異常な情景はわたしの現実感を遠くへ追いやってしまった。わたしの心は冷かであった。何の感動もない数分間が過ぎた、そして、わたしは唯、母の歔欷く声を聞いただけであった。
「兄貴は自殺したんですね?」
わたしの声が妙にとげとげしく響いた。その声に応ずるように母は首をもたげたが、
「ああ、ピストルで――」
と言ってから急に調子を落して、
「どうしてこんな気になったものかの」
と呟くように附け加えながら、外光に反射する硝子戸の方を見詰めていた。
やっぱりそうだったのか、とわたしは思った。数年前に感じた凶兆をまざまざと眼の前に見せつけられたような気がしてきた。するとわたしの不安はおそろしい速度で廻転しはじめた。
「真逆、公金を費い込んだんじゃあるまいね?」