Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
庭のテントは片隅の芝生から濡れはじめ、みるみるうちに茣蓙に沁みとおり、休んでいる人たちはうすいシャツを着たまま肌寒さに身顫いしている。
衛兵所へ外出の交渉にいった相川が、意気揚々と引っかえしてきた。「今夜から監視兵は半減されるそうだよ、マニラ市内にはもう比島陸軍の最後の一個中隊が残っているだけだ、バタンガスでは今日あたり激戦が展開されているらしいな」
夕方、相川とふたりで、配給調査の任を帯びて婦女子のテントを訪問すると、四十前後の品のいいおかみさんが応接に出てきた。
「どうです、この頃の握り飯一つ宛では、お子さんがたはお困りでしょう、どうですか、ひもじいとはいいませんかね?」
「そりゃあ、ひもじがるですよ」
おかみさんは悲しそうに眉をひそめた。「ですから、どのお母さんもみんな同じように自分の分け前を半分子供たちにやっていますよ」
その顔があまりに厳粛すぎるので二人とも呆然として、つづく言葉が出なくなってしまった。われわれだって毎度の食事が握り飯一つではすぐ腹が空いて、居ても立ってもいられないほどじりじりしてくるのである。母親が子供を愛するというのはおそらくこの世の中でもっとも平凡な事実であろう。