Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
その暑苦しい車の音が響いてくると私は耳をふさいでしまった。あらゆるものが不快であった。窓をあけると街から来る生ぬるい風が病毒を室の中へ流しこむような気がした。然し、屋根裏の部屋には高い窓にうつるゆるやかな眺望があった。窓の下は裏街の傾斜面で、傾斜面の両側にならんでいる古い煉瓦づくりの二階家のバルコンは大抵街路樹の深い葉かげにかくれていた。じっと見下ろしていると、その中に営まれている穏やかな生活が思われた。往来を歩いてゆく人間の姿がみんなびっこのように見える。だから、この室の中にいると私は高い望楼の中にいるような気がした。窓の左側には断崖のような倉庫が聳え、そのうしろが坂の曲り角であった。街路樹のかげに列をつくってならんでいる二階家のバルコンは夜になると一層私の心をひきつけた。そこにはうしろの窓からくる光を浴びて、それぞれの家の家族らしい人たちが嬉しそうにかたまっていた。雑音の沈んだ夕ぐれは空気が澄んでいるので、彼等のきが顫えるように伝わってきた。ときどきマンドリンの音が聞えたり、桃色のナイト・ドレスが輝やかしく私の視野の中に閃いたが、街路樹の深い葉かげに遮られているので人の姿も顔も見ることができなかった。