Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
、唯ひと口に申せばこのときの会体の知れない物がなしさがわたくしの心に決断をうながしたというだけのことでございます。もしあのひとが最後の数分間で生死の悟りをひらかれないでしまったとしたらだれよりも救われないのはわたくしにちがいございません。そう思うだけでも身の毛がよだつようでございます。大へん寒い夜でありましたが、わたくしは一睡もとらずにひと晩じゅう読経にあかしました。唯、監房で知り合ったというだけの間柄ではございますがはなす機会の多かったせいでもありましょう、あのひとだけは別のひとだという気がいたしません。悩みのふかいひとであっただけにしぜんあのひとの気もちの中に深入したものと思われます。それにくらべますれば岸本柳亭はどんなに幸福であったかとも言えましょう。柳亭と愛情関係のあったと言われる柴しげ子だけが刑の執行をつぎの日にまわされることになったのでございます。何にいたせあのひとたちがいずれも一命をすてる覚悟であったことだけはたしかでございましょう。その気もちがながいあいだにたたみこまれて、ひとりでにいざというときの落ちつきができあがるもので人間というものは結局見透しさえつけば覚悟もできるものと思われます。