Japanische Klassiker mit Furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Lesen Sie 島原心中 (しまばらしんじゅう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.293 Zeichen · 29 Bildschirme
それだのに、彼女が死を企てたときに、ちょっとその手伝いをしたあの若者が、何故に罰せられなければならないのだろう。
そのときに、僕はふと、さっき尋問の手段として、若者にいいきかせた自分の言葉を思い出したのです。
『……女が可哀そうじゃないかね。どうせ二人で死んで行くのだもの。女が苦しんでいれば、お前も手をとって力を添えてやるのが人情じゃないか。それが、人間として美しいことじゃないかね』
自分が、手段のためにいったこうした言葉が、力強く僕の胸に跳ね返ってきたのです。あの若者のような場合に、あの若者のような態度に出ることは、何人からも肯定さるべき、自然な人情ではないか。それが、人間として美しいことではないか。それだのに、自分自身死にそこなって苦しがっている彼を、法律は追及して、罰しなければならないのだろうか。
そんなことを、考えていると、僕はさっき、傷に悩んでいる青年を脅したり賺したりして問い落して得意になっていた自分の態度が、さもしいように考えられて来たのです、僕の職務的良心が、ともすればぐらぐらに崩れそうになっていたのです。
出張したのは二時頃でしたが、すべての手続きが片づいた頃には、日がとっぷりと暮れていました。